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design+management

デザインと中小企業経営を繋ぐブログ

第二章 中小企業へのデザイン導入の必要とその効果②

 

 

 

 

design-management.hatenablog.jp

 ※前章の記事

 

2.2デザイン導入の効果

 この章からはデザインを導入した際の効果について掘り下げていく。デザインの効果を考える上で、ハーバードビジネススクールのRobertHayesの整理した考え方が参考になる。彼は企業が行うデザイン活動の役割は大きく分けて4つあるとした。その要約は以下のようなものである。

 

①競争力促進ツールとしてのデザイン

優れたデザインは、製造コストの削減や、製品の品質や信頼性を高めるとともに、メンテナンスコストやリードタイムの削減に貢献する

②差別化ツールとしてのデザイン

機能、品質、価格、製造コスト、開発サイクルといった要素が似通ったコモディティ化が進んだ市場においては、優れたデザインが競合からの差別化要素となり、顧客に選ばれる商品となる

③統合ツールとしてのデザイン

優れたデザインを生み出す過程で、デザイン、エンジニアリング、マーケティング、製造といった開発の諸段階における人と機能が統合されることで部門間コンフリクトを解消し、開発プロセスの合理化を実現する。

④コミュニケーションツールとしてのデザイン

デザインは、企業のメッセージ、価値観、イメージを社内外に伝達し、共有させるコミュニケーションツールである。

 

 これら4つの役割を基に財団法人産業研究所が作成したデザイン効果項目が図表2.5である。今後この表を中心にデザイン導入の効果を考えていきたい。

図表2.5 デザイン効果項目

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出典:産業研究所「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」基に筆者作成

 

(1)信頼性の向上

 「2.1デザイン導入の必要性」で中小企業の信頼性向上の必要性と、それに対するデザインの有効性を述べた。それを裏付けるデータが先ほどの産業研究所『デザイン導入の効果測定等に関する調査研究』から出されている。内容としては、先ほどの図表2.5の効果項目を基に、グッドデザイン賞を受賞した企業に向け、効果項目の評価を依頼したものである。その結果をまとめた表が図表2.6である。

 表の説明として、対象は過去10 年間にグッドデザイン賞を受賞した企業100 社である。アンケート項目は先ほどの図表2.5各項目である。各項目については、「かなり効果があった」(2点)、「多少効果があった」(1点)、「あまり効果がなかった」(-1点)、「ほとんど効果がなかった」(-2点)の4択式としている。

 集計表では「かなり効果があった」「多少効果があった」を「肯定的回答」とし、その企業の割合を記載している。また、「平均点」の欄は、各項目の合計点数を回答企業数で除したものである。

図表2.6 デザイン効果項目調査結果

 

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出典:産業研究所「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」基に筆者作成

 この表を見ると企業イメージや知名度の向上といった項目に関しては8割を超える企業が肯定的な回答を示しており、企業の信頼度向上に対しデザイン活動の効果が高いことの裏付けとなっている。特にこの企業イメージや知名度といった項目は、全ての項目の中でも一番肯定的な回答が多く、デザインの効果が最も高い分野である。

 

図表2.7 デザインの企業イメージ向上への効果

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出典:産業研究所「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」基に筆者作成

 

 他にも、1.2.2でも触れた知的財産研究所の企業知財部門へのアンケート調査では、デザインの導入が企業イメージの向上に繋がったとする回答が、知財担当者では約6割、デザイン担当者では約7割に上っている。

 デザインの企業イメージ向上への効果を裏付けるデータは多い。実例を考えると、1990年代に多くの企業が導入し関心を集めた、CI(コーポレートアイデンティティ)という概念もデザイン要素を取り入れ、企業の信頼性、イメージの向上を図ったものである。

 もっと身近な例で考えてみれば、2.1でも取り上げたように、会社案内、会社HP等も、全く配慮のないデザインでは、その企業に対する信頼感は変わってくるはずである。会社案内を見た人が知りたい情報が的確に主張されているか、その企業の特長はどこなのか、それが見えない会社案内や会社HPでは見た人が一抹の不安を感じるであろうことは容易に想像できる。

 

(2)経営理念構築への効果

 信頼性の向上と同様に「2.1デザイン導入の必要性」で経営理念構築の必要を述べた。経営理念構築にもデザイン導入の効果があることが先ほどの資料から見て取れる。

 他にも、1.2.2でも触れた知的財産研究所の企業知財部門へのアンケート調査では、デザインの導入が企業イメージの向上に繋がったとする回答が、知財担当者では約6割、デザイン担当者では約7割に上っている。

 デザインの企業イメージ向上への効果を裏付けるデータは多い。

 実例を考えると、1990年代に多くの企業が導入し関心を集めた、CI(コーポレートアイデンティティ)という概念もデザイン要素を取り入れ、企業の信頼性、イメージの向上を図ったものである。

 もっと身近な例で考えてみれば、2.1でも取り上げたように、会社案内、会社HP等も、全く配慮のないデザインでは、その企業に対する信頼感は変わってくるはずである。会社案内を見た人が知りたい情報が的確に主張されているか、その企業の特長はどこなのか、それが見えない会社案内や会社HPでは見た人が一抹の不安を感じるであろうことは容易に想像できる。

 

(2)経営理念構築への効果

 信頼性の向上と同様に「2.1デザイン導入の必要性」で経営理念構築の必要を述べた。経営理念構築にもデザイン導入の効果があることが先ほどの資料から見て取れる。

図表2.8 デザイン効果項目調査結果 個別項目

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出典:産業研究所「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」基に筆者作成

 

 経営理念の再構築という項目に関しては6割以上の企業が肯定的な回答を示している。また社員の意識の変化という項目も肯定的回答が多い。社員の意識の変化とは、経営理念が明確にされることで現れる効果ともいえるため、効果の裏付けをより後押しするものとなっている。

 また、後述のブランドの構築という視点でも、経営理念の明確化は非常に重要な役割を持つ。知財研究所のアンケートによれば、ブランドに経営理念が反映されるべきかという問いに対し、企業のデザイン担当者の9割以上が、「はい」と答えている。

図表2.9 ブランドに経営理念が反映されるべきか

 

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出典:知的財産研究所 「企業の事業戦略におけるデザインを中心としたブランド形成・維持のための産業財産権制度の活用に関する調査研究報告書 2011年」より筆者作成

 

 デザインの活用が経営理念の再構築に繋がる例としては、アメリカのオフィス家具メーカー、ハーマン・ミラー社の例が挙げられる。

 同社は経営理念として「人間の問題解決を図る」ことをテーマとし、それを伝えるためのツールとしてデザインを明確に位置付けている。創業当初は至極一般的な家具メーカーに過ぎなかったハーマン・ミラー社が、このような理念を掲げるようになった切っ掛けは、ジョージ・ネルソンやチャールズ&レイ・イームズと言った世界的なデザイナーとの出会いである。「デザインは社会の変化に伴って生まれてくる人間の問題に対応しないといけない」(ジョージ・ネルソン)、「デザインは問題を解決するための適切な解答でなければならない」(チャールズ・イームズ)と言ったデザイナー達から学んだ思想を経営理念にまで高め、それを大切に受け継いできたからこそ、現在のトップブランドとしての姿があるとハーマン・ミラー社は考えている。デザインの導入が、経営理念を明確化する切っ掛けとなり、経営理念の再構築へと繋がった例といえる。

 

(3)価格競争回避への効果

 2.1で外部環境の変化から価格競争の回避への対策が急務であるということを説明してきたが、デザインの導入は価格競争回避に効果がある。ただし、効果を得るためには条件がある。

 図表2.10はデザインの導入が高価格設定に効果があった企業とそうでない企業を、デザイン活動の取組項目ごとに比較した物である。これをみると、効果のあった企業となかった企業で乖離の大きい項目は以下の3つになる。

 

①商品と連動した営業・広報戦略を策定すること

②競合他社の商品をデザイナーが十分に知ること

③デザイナーが経営視点を身につけること

 

 これらの項目に注意しデザイン導入を行えば、価格競争回避が可能といえる。

 ただし、これら3つの項目はいずれもデザイナーに経営戦略の視点を求めるものである。現実問題として中小企業が、このような高い能力を持ったデザイナーを見つけ適正価格で契約すること、商品デザインと連動した営業・広報戦略を独力で展開することは、非常に難しいことだろう。※後の章でも述べるが、このような条件を満たし明確に効果を上げるためには、企業とデザイナーを繋ぐ橋渡し役が必要といえる。

 また、企業とデザイナーとの橋渡しだけでなく、デザインを導入することで、企業や商品のブランド力を高めるところまで繋げることが求められる。

図表2.10 デザイン導入で「従来よりも高価格での価格設定」を実現した企業の特長 

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出典:産業研究所「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」基に筆者作成

 

(4)ブランド構築への効果

 デザインの効果はブランドの構築とセットで語られることが非常に多い。本論文でもデザイン活動をブランド化まで繋げることが重要だと主張してきた。

 ではまずデザイン導入がブランド構築に効果があるかという事を確認していきたい。知的財産研究所が行った企業へのアンケート調査によると、ブランド構築に重視すべきデザインは何かという選択式の問いに対し、「製品のデザイン」(63 者、約86%)及び「製品群のデザイン」(57 者、約78%)を回答した割合が高く、「ブランド構築にデザインを重視する必要はない」と回答した割合はゼロであった。このことから、企業はブランド構築には製品デザインが非常に重要な要素であると考えていることがわかり、デザインの効果を感じているといえる。

図表2.11 ブランド構築に重視すべきデザイン

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出典:知的財産研究所 「企業の事業戦略におけるデザインを中心としたブランド形成・維持のための産業財産権制度の活用に関する調査研究報告書 2011年」より筆者作成

 

 デザインの導入がブランド構築に効果があるということを確認したところで、今度はブランド構築がもたらす効果についても考えたい。

 先ほどから、ブランド構築は価格競争の回避が可能と主張してきたわけだが、ブランド構築の効果はこれだけに留まらない。一般的に効果があるとされる項目だけでも以下のように列挙することができる。

 

  • 参入障壁の構築
  • 競合に対する差別化による競争優位確立
  • 商品、サービスの選択確率向上
  • リピート率向上…etc

 

 これらの効果はブランドの知覚価値を高めることにより実現できる。そのためにデザインが核になることは言うまでもない。こうした効果は中小企業経営における競争優位の源泉となるだろう。

 また経済産業省による、ブランドがもたらす効果についての調査結果も存在する。「ブランド価値評価研究会報告書 平成14年」では、4000近い企業(上場・非上場企業含む)に対しブランドに関する質問とその結果が掲載されている。図表2.12はその中でも競争優位をもたらすブランド効果に焦点を絞ったものである。同図をみると、製品の高価格設定や、価格下落の防止、またシナジー効果による新市場開拓といった効果がデータにより示されている。

図表2.12 ブランドが経営に与える効果

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出典:経済産業省「ブランド価値評価研究会報告書 2002年」 基に筆者作成

 

 この図を見ると、

①競合に比べ高価格設定可能

②競合と同価格でも販売量が多い

③ブランドによるシナジー効果で新市場開拓が可能

 

 この3つの項目の値が高いことが見て取れる。①②の項目は、これまで主張してきた価格競争回避の裏付けとなるものである。また、ブランドによる知名度や実績等のシナジーを利用し新市場を開拓することにも効果があるとされている。どちらの効果も企業にとって大きな競争優位となりえるだろう。

 デザイン導入をブランド構築にまで高めることができれば、こうしたブランド効果も同時に期待することができるのである。

 

(5) 小括

  図表2.13 デザインが経営に与える効果 概念図

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 ここまでのデザインの効果内容を振り返ってみると図2.13のようにまとめることができる。まず経営理念の再構築という項目は、企業経営においては一番上の上位概念となる。

 この企業理念が明確に固まった上で、その企業理念を踏襲したブランド化や企業イメージの発信を行う。

 そしてそのブランド力・企業イメージを基に、価格競争を回避し、製品やサービスの高価格設定を実現する。

 こうしてみると、やはりデザインの導入は企業経営の下位概念でのみ導入しても効果が十分に得られないことがわかる。こうした一連のデザインの価値連鎖を実現するためには、中小企業診断士のような、企業経営全体を俯瞰してみることができる存在が、上手くデザイナーと企業の間に立って調整することが重要であるといえる。

 また、これらデザイン活動全体を統制していくには、機動性・柔軟性の高い中小企業のほうが望ましいこともわかる。