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第三章 デザインコーディネーターとしての中小企業診断士①

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第三章 デザインコーディネーターとしての中小企業診断士

3.1コーディネーターとは

 まずコーディネーターとはどういう意味かを確認しておきたい。一般的には「物事の調整・まとめ役」「複数の活動や組織の様々な要素を調和のとれた効率的な関係にする人」といった意味合いで使われることが多いだろう。

 ではこうしたコーディネーターはどういった理由で必要とされるのか。活用する側は物事を、こうしたい、こうありたいという曖昧な希望は持っているが、自身でそれを具体化し、実現に必要なリソースを確保する知識や能力、時間が十分にないため、専門家に業務の代行や意思決定の支援を依頼するというのが一般的であろう。

 コーディネーターは自身が直接実務に従事するわけではなく、専門知識や経験、センス、問題解決能力などを活かして、顧客の意に沿った問題解決提案や意思決定の支援や助言をするのである。

 

(1) 他コーディネーター資格との違い

 直接的なデザインのコーディネーター資格は存在しないが、デザインに関連する資格でのコーディネーター資格はいくつか存在している。

 代表的なところはカラーコーディネーターや、インテリアコーディネーターなどである。これらのデザイン関連資格の業務では、今回の論文で主張している中小企業へのデザイン導入のコーディネーターとはなりえないのか。私はなりえないと考えている。

理由は以下の通りである。

 

①内容が細分化されている、全体を俯瞰できる資格ではない。

②企業の潜在的要求を体現できない。

③組織全体での導入。戦略を通しての導入、販売、広告などとの連携は難しい。

 

 

 

図表3.1 コーディネーター資格比較

 

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 ①多くのデザイン関連資格は非常に細分化されており、図表3.1を見るとわかるようにコーディネーター資格も同様に色とインテリアに細分化されている。非常に実務に近い内容のものがほとんどである。しかし、それぞれのデザイン資格保持者に、デザインを依頼する段階で、すでに企業のデザイン導入方法が間違っている可能性はないだろうか。デザイン導入になれていない企業なら、尚更その可能性は高い。

 こうした懸念があっても、経営全般に関する知識がなければ、デザイン導入を成功に導くことは難しい。

 

 ②①の内容と重なる部分があるが、経営全体を俯瞰する力がなければ、企業の潜在的なデザイン導入要求を引き出すこと、理解することはできない。企業の潜在的要求を十分に理化できない場合、デザイン導入が失敗に終わってしまう可能性は高い。

 

 ③図表3.1挙げている資格は何れも専門職としての資格であり、組織機能を横断して決定を下せるような内容の資格とは言い難い。

 

(2)小括

 ここまで見てきた通り、既存のデザイン関連コーディネーター資格では、経営全般の理解が十分でないため、経営上位概念でのデザイン導入という点では、コーディネーターになりえないと私は考えている。その点、中小企業診断士であれば、現状の持てる知識に、デザイン関連知識をある程度加えることで、デザインコーディネーターのとしての役割を担えるものと考えている。また、診断士の方が経営層との距離も近いことが多い。