グッドデザイン賞の概要と3視点でのメリット
2017年4月5日より、グッドデザイン賞の応募募集が始まります。既に歴史も長い賞ですが、今回はこのグッドデザイン賞を受賞することのメリットを整理します。尚、このブログでは、デザイナー視点ではなく、企業側の受賞メリットに注目して記載していきます。
1.賞の概要
まずはそもそものグッドデザイン賞の概要に関してです。下記はグッドデザイン賞HPに掲載されている内容の引用です。(2017/3/26現在)
グッドデザイン賞は、様々に展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちのくらしを、産業を、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。
その母体となったのは、1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」であり、以来約60年にわたって実施されています。その対象はデザインのあらゆる領域にわたり、受賞数は毎年約1,200件、60年間で約44,000件に及んでいます。また、グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。
理念
上記概要では「総合的なデザインの推奨制度」と表現されていましたが、その具体的な評価基準はどのような視点なのでしょうか。参考になるのは、同HPでのグッドデザイン賞の理念という項目です。
人間(HUMANITY)もの・ことづくりを導く創発力
本質(HONESTY)現代社会に対する洞察力
創造(INNOVATION)未来を切り開く構想力
魅力(ESTHETICS)豊かな生活文化を想起させる想像力
倫理(ETHICS)社会・環境をかたちづくる思考力
これを見ると、単純な外観のデザイン性・商業性といった項目だけでは評価されていないことがわかります。この点は、これから新規に応募を検討する企業にとっては注意が必要な点でしょう。
賞の種類
グッドデザイン賞は単一の章ではありません。其々分野やランクごとに下記図表のように分かれています。
出典:2016年度グッドデザイン賞審査委員チュートリアルブックより
http://download.g-mark.org/data/2016/j_tutorial2016.pdf
この図表をみると、グッドデザイン賞の中からさらに優れた100の製品・サービスを選出し、その中のさらに優秀なものには金賞・大賞を設定。さらに特別賞として、4つの分野の賞を設定しています。
当ブログでは、中小企業へのデザイン活用を考えていることから、「グッドデザイン特別賞[ものづくり]」の賞に特に注目しています。
対象製品分野
対象の製品・サービスの分野に関しては、「ユーザー」「レイヤー」という2つの軸で大きく分類されています。
ユーザー
- 一般・公共向け(General-use)
- 専門家向け(Professional-use)
レイヤー 有形
- 製品(Product) かたちを有するもの
- 空間(Space) かたちを有する様々な要素により場を構成するもの
レイヤー 無形
- メディア(Media) かたちを有さず情報伝達の媒介となるもの
- 仕組み(System) 複数の要素が組織的に構成され、総合的に目的を達成するもの
- 取り組み(Activity) 特定の目的を達成するための様々な取り組みの総体
この中よりさらに詳細の分野が設定されています。詳細は下記リンクを参照してください。
http://download.g-mark.org/data/2017/category_gda2017.pdf
2.受賞のメリット
①賞全体を通してのメリット
賞全体を通じたメリットに関しては下記のアンケート結果を参考に確認していきます。
グッドデザイン賞に関するアンケート調査
http://download.g-mark.org/data/others/research_gda.pdf
調査時期:2015年1月
調査対象:2014年度グッドデザイン賞受賞企業
有効回答者数:104社
調査方法:インターネットアンケート調査
上記アンケート項目からは、半数以上の受賞企業がすでに応募経験がある企業であることがわかります。複数回応募している企業の動機というのは、過去に成果があったものと推測することもできるでしょう。上位の応募動機は下記のとおりです。
- 企業価値を高めること
- Gマーク活用によるPR
- 客観的な第三者評価の確保
- 関係者のモチベーション向上
さらに、上記項目では具体的な効果があった項目に関して記載があります。
これらを見ると、まず大きく分けて対外向けへの効果と、社内向けへの効果の2つに分かれていることがわかります。
対外向けへの効果は割合こそ低いですが、売り上げ増加や新規顧客開拓といった企業の収益性に直結する項目がある点は注目です。PR方法の工夫(マーケティング4P全体での精度向上等)により、よりその効果を高めることができるのではないでしょうか。
社内向けの項目はどれも高い値が目立ちます。デザインは導入の効果を上げるまで長期視点での取り組みが必要なことから、社内のモチベーションを高めるということは、推進力を維持するという点で、中長期的に効果のある項目といえるでしょう。
②PR特典・効果
受賞後には下記のようなプロモーションの機会を得ることができます。
受賞プロモーション | 受賞後の活動 | Good Design Award
グッドデザイン賞受賞発表会
例年9~10月にグッドデザイン賞の各章の授賞式が行われます。2016年度の発表会ではテレビや雑誌、業界紙などから約50媒体が参加したそうです。
グッドデザイン賞受賞展「G展」
11月前後には「その年にグッドデザイン賞を受賞した全件」を展示するグッドデザインエキシビション(G展)に出展できます。東京ミッドタウンの様々な会場を使い、ワークショップなども交えて展示されます。デザイン関係者をはじめ、流通関係者、報道関係者、学生、海外の視察団などが来場し、取引の機会となります。
グッドデザイン・ベスト100 デザイナーズプレゼンテーション
グッドデザイン賞の中でもベスト100に選ばれた製品に関しては、デザインをてがけたデザイナーによるプレゼンテーションの機会が得られます。例年東京ミッドタウンが会場となっています。またUSTREAMでも同プレゼンテーションは放映されます。
※2015年のプレゼンテーションを見学しましたが、時間帯によっては閲覧者が少なく、そこまで大きなプロモーション効果はないかもしれません。
USTREAM: GoodDesignExhibition: グッドデザイン賞受賞展「Good Design Exhibition」関連の情報をお伝えします。 . その他
受賞年鑑
3月にはすべての受賞製品を掲載したグッドデザイン賞受賞年鑑が発行されます。ベスト100に入った製品に関しては、概要と評価ポイントまで掲載されます。また、グッドデザイン賞のHPには過去受賞製品が掲載されます。
GOOD DESIGN Marunouchi での展示・イベント
日本デザイン振興会がデザインと社会をつなぐ最前線の交流拠点として、2015年10月に東京・丸の内に開設したスペースです。展示やセミナー、トークイベント、ワークショップなど、グッドデザイン賞を受賞した企業・製品を中心に様々な企画を実施しており、PRの機会が得られる可能性があります。
GOOD DESIGN STORE での販売
香港やバンコクにあるグッドデザイン賞受賞商品の販売を主体としたグッドデザイン賞の常設の販売・発信拠点にて販売の機会が得られる可能性があります。
その他
上記以外にも受賞製品に向けた企画・イベント・販売企画等が随時行われています。
受賞企業によるPR特典の効果に関するアンケート
これらPR特典の中で、受賞企業が効果があったと感じた項目は下記のとおりです。
現状では東京ミッドタウンでの受賞展が最も効果が高いようです。ただし、他の項目に関してはまだ広く周知されていない面もあると思われます。そのため、企業側のPR戦略との相性によっては効果的に活用できるものもあると思われます。
出典:グッドデザイン賞に関するアンケート調査
http://download.g-mark.org/data/others/research_gda.pdf
調査時期:2015年1月
調査対象:2014年度グッドデザイン賞受賞企業
有効回答者数:104社
調査方法:インターネットアンケート調査
③Gマークの使用
グッドデザイン賞を受賞した企業は、そのことを証明するGマークを使用することができます。Gマークに関する調査資料は下記の通りです。
http://download.g-mark.org/data/others/ninchiritsu2014.pdf
2014年度の調査結果
調査時期:2014年12月
調査対象:全国の15歳以上男女(国勢調査の年齢・男女別人口の構成比を基に層化抽出を実施)
有効回答者数:2,100名
調査方法:インターネットアンケート調査
Gマークの認知度
Gマーク・グッドデザイン賞の認知度ともに約8割という高い値になっています。賞の存在をしられているという点で、まずは受賞のメリットは感じられるでしょう。
Gマークの消費者イメージ
Gマークに対するイメージにおいてはデザイン性・機能性・品質といった項目が上位にきています。より高加価値の製品イメージを付与したい場合、製品の品質上の信頼性を高めたい場合等に有効といえるでしょう。
また上記図のとおり、Gマークがついている商品に関しては、総じて6割以上の消費者が魅力を感じているようです。この「魅力」という言葉が何を指しているのか、その定義ははっきりとしませんが、広い意味で活用の効果はあるといえるでしょう。
※ここに、「Gマークを使用した商品は、他商品と比べて高価格でも購入したい」といったような具体的な項目があると、企業の活用がより進むのではと感じました。
Gマーク使用企業の消費者イメージ
Gマークを使用する企業のイメージに関しては、「センスがいい企業」「ものづくりが上手な企業」といった項目が上位に来ています。少し項目が曖昧ですが、製品の企画力や、革新的な社風といったイメージを付与できるといえるのではないでしょうか。