METI「産業競争力とデザインを考える研究会」について
先月7月13日に、経済産業省のHPにI「産業競争力とデザインを考える研究会(第1回)」に関する情報が掲載されました。今回はこの研究会の内容と配布資料に関して要点を整理していきます。
研究会開催の目的(ブログ管理人要約)
世界的に製品のコモディティ化が進む中、デザインは重要な差別化要因であり、産業競争力向上に寄与するものではないか。
しかし現状日本では経営層を中心に、まだデザインに対する意識が低い。本研究会ではその課題と対策を検討する。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/001_02_00.pdf
この文章は、経済産業省が発表するデザイン関連資料の導入文のきまり文句です。特段の真新しさはありません。
研究会委員
梅澤 高明
A.T. カーニー株式会社 パートナー/日本法人代表
喜多 俊之
株式会社喜多俊之デザイン研究所所長
小林 誠
知的財産グループ シニアヴァイスプレジデント
田川 欣哉
株式会社タクラム・デザイン・エンジニアリング代表取締役
英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート客員教授
竹本 一志
サントリーホールディングス株式会社 知的財産部長
田中 一雄
株式会社 GK デザイン機構代表取締役社長
永井 一史
株式会社 HAKUHODO DESIGN
代表取締役社長 クリエイティブディレクター
長谷川 豊
ソニー株式会社 クリエイティブセンター センター長
林 千晶
株式会社ロフトワーク 代表取締役
前田 育男
委員を見ると、基本的には大手企業の経営・知財・デザイン分野の人を集めたという印象です。ただ、株式会社タクラム・デザイン・エンジニアリングや株式会社ロフトワークといった企業は近年その名を知られてきた企業であり、そうした企業の代表を委員とするというのは、最新の実情も踏まえた調査研究を行おうという意図を感じるところです。
本研究会の概要
基本的に、会での打合せ内容は非公開とのことです。ただし、議事録や配布資料などは公開していく予定です。
今後複数回の調査・意見交換を経て、11月ごろをめどに中間発表を行い、3月の年度末には報告書を発表するというスケジュールになっています。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/001_02_03.pdf
配布資料「デザインを巡る現状と論点」について
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/001_02_01.pdf
簡易要約
- コモディティ化の時代 新たな差別化要因としてのデザインが重要。
- 世界的にも先進的企業はデザインで収益を上げてきた
- 日本はクリエイティビティが高いと、国内外ともに考えられているが、企業経営者自身はあまりデザインの重要性を認識していない。
- 経営層のデザインの必要性をもっと認知するべきではないか。
- テクノロジーの進歩により、バリューチェーン全体の最適化が重要となっており、その手法としてデザイン思考が近年注目をあびている。
- 本研究会では、デザインという言葉の定義・領域をどのように設定するかはまだ検討中
- これらの項目をふまえ、下記の論点に関して議論していく
【現状認識】
(1)製品同質化が進む中での製品・サービスの差別化の在り方
(2)デザインと産業競争力の関係
(3)デザイン・アイデンティティの必要性
(4)我が国のデザイン力、デザインを取り巻く環境の国際比較
(5)第四次産業革命とデザイン
【課題整理】
(6)デザインによる我が国企業の競争力強化に向けた課題
(7)意匠制度が果たす役割と国際比較
【対応策】
(8)課題解決のための対応策
筆者所感
基本的な内容・論点は過去に経済産業省が公表してきた資料と同じですが、下記の項目はあらたな視点であり、どのような研究結果が示されるのか興味を引くところです。
- デザイン投資による効果の測定に関しても議論を行う見込み
- IOTやAI・ビッグデータといった技術の進歩に対応した研究を目指している
- デザインをブランディングにつなげる際の課題や効果についても議論を行う見込み
- 海外と比較し、国内の意匠制度の課題点を整理する
※ また、デザイン思考に関しては本年度のものづくり白書でも大きく言及されており、本研究会でも取り上げられていることから、国でのあらたな注目分野であることがうかがえます。
これら論点を議論したうえで、経済産業省・特許庁での対応策を検討するところまで、本研究会では行う予定とされています。どのような政策に落とし込まれるのか、非常に気になるところですので、次回中間発表とされる11月時期にも、本研究会の動向には注目していきたいと思います。