デザイン統計データの紹介(事業所数・年間売上高等)
今回はデザイン分野に関する統計データに関して掲載していきます。
デザインに関する統計データとしては、経済産業省が実施している、特定サービス産業実態調査によるデータが一番代表的なものかと思います。
調査概要
調査の概要に関しては、下記の引用文を参考にしてください。
調査の目的
特定サービス産業実態調査は、サービス産業の実態を明らかにし、サービス産業に関する施策の基礎資料を得ることを目的としている。
調査の沿革
【調査開始年】昭和48年(1973年開始)
【調査の沿革】
昭和48年に「昭和48年特定サービス業実態調査」の名称で実施され、対象業種は、毎年調査業種(物品賃貸業、情報サービス業、広告業)と年次別にローテーションする業種(知識関連産業、余暇関連産業、公害関連産業)によって構成されていたが、昭和54年からは調査対象業種を拡大して行政上必要な業種を新規業種として追加していくこととし、調査の名称も「特定サービス産業実態調査」に改められた。
平成3~11年までは①毎年調査業種(5業種)、②周期調査業種(3年周期で9業種)、③選択調査業種(毎年1から2業種)のパターンにより実施され、平成12年からは、調査業種の上位分類である「対事業所サービス業」を「ビジネス支援産業」とし、「対個人サービス業」を「娯楽関連産業」及び「教養・生活関連産業」に分割し、各々の分類ごとの業種を原則として、3年に1回調査を行っていた。
平成18年からは、母集団名簿をアクティビティベース(業界団体名簿)から日本標準産業分類ベース(事業所・企業統計調査名簿)に変更をするとともに、調査業種については、7業種とした。
平成19年からは4業種を追加し11業種に、平成20年からは、10業種を追加し21業種に、平成21年からは、冠婚葬祭業、映画館、興行場,興行団、スポーツ施設提供業、公園,遊園地・テーマパーク、学習塾、教養・技能教授業の7業種を追加し28業種となり、平成19年からの業種拡大が終了した。
調査の対象
【地域】全国
【単位】事業所(一部業種は企業)
【属性】平成24年経済センサス-活動調査において、以下の日本標準産業分類(平成21年総務省告示第175号)の小分類に格付けされた事業所(一部業種は企業)が対象。https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/gaiyo.html#menu01
同調査では事業所数・事業所ごとの年間売上高等のデータをPDF形式・CSV形式で公開しています。データは単年度ごとの内容のため、この記事では直近の4回の調査データの推移を確認していきます。
デザイン業の定義について
同調査でのデザイン業務の種類は下記のとおりです。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-2/h29/pdf/h29attention16.pdf
ポイント指標
同調査では各業種で15前後の調査事項がありますが、この記事では下記の指標に絞って注目し、直近4回分の数値の推移を確認していきます。
デザイン業全体の年間売上高推移
デザイン業全体の年間売上高は、2014年・2015年と一度下降した後に少し持ち直しているという状況です。
1事業所当たり年間売上高推移
デザイン業全体の、一事業所ごとの年間売上高は2013年以降微増を続けています。デザイン業全体の年間売上高はこの間下降傾向の時期があったことを考えると、事業所の集約化というのは大きな流れととらえることもできるかもしれません。
推測ではありますが、デザイン業も小規模事業者が多いという特徴があるため、事業主の高齢化による廃業等が影響している可能性もあるのではないでしょうか。
デザイン業全体の事業所数推移
デザイン業全体の、事業所数の推移は2013年以降一貫して下降傾向にあります。上記1事業所当たりの年間売上高が上昇しているのは、事業所数減少の影響といえそうです。
年間売上高規模別の年間売上高推移
事業所の年間売上高規模別にみた、年間売上高の推移です。売上高規模の大きい事業所ほど売上高が増加しているのに対し、売上高規模の小さい事業所の売上高は下降・横ばいの傾向にあります。
これは、年間売上高規模が10億円を超える会社数が20社以下しかなく、年々10億円を超える企業の数が増加しているのが大きな要因です。ただ、それに対して売上高規模の小さい企業の売上高はほぼ横ばい状態であるため、デザイン業全体で事業所の統廃合の流れがあり、売上高の増減も規模によって二極化が進んでいるというのがトレンドといえそうです。
業務分野別年間売上高推移
デザイン業務の種類別の年間売上高の推移は下記の通りです。
改めてデータで確認すると、デザイン業の売上高の大半はグラフィックデザインの分野が占めていることが良く分かります。ただし、グラフィックデザインの売上高の推移は、おおよそ横ばい傾向です。
増加傾向のある分野は、インダストリアル・マルチメディアの2分野です。
インダストリアル、いわゆるプロダクトデザインの分野では、世界的に製品のコモディティ化が進んでいる中で、デザインが差別要因として重要性を増している傾向ととらえることもできるのではないでしょうか。
マルチメディアの分野では、そもそも成長産業分野であることに加えて、サービスの付加価値を高める要素としてデザインの重要性が高いということを感じさせます。
その他気になる点としては、パッケージ分野では売上高が下降傾向となっています。プロダクトに連動して増加傾向にあるものとイメージしていましたが、データ上では下降傾向にあるというのが意外な内容でした。
(単位:百万円)
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2017年 | |
インダストリアル | 11,607 | 11,806 | 12,082 | 13,867 |
グラフィック | 126,180 | 122,839 | 129,255 | 128,639 |
インテリア | 7,252 | 11,289 | 10,408 | 8,943 |
パッケージ | 15,303 | 13,514 | 13,779 | 13,029 |
ディスプレイ | 7,563 | 9,291 | 8,822 | 8,965 |
テキスタイル・ファッション | 12,383 | 8,835 | 8,028 | 8,176 |
マルチメディア | 12,577 | 15,245 | 13,422 | 19,709 |
その他 | 19,807 | 20,841 | 17,802 | 25,567 |
合計 | 212,672 | 213,660 | 213,598 | 226,895 |
業務委託先産業別の年間売上高推移
デザイン業務の委託先、つまりデザインの需要分野別の売上高の推移は下記の通りです。
全体の傾向としては、情報通信以外は業界の景況感によって需要の波があるという印象です。景況感によって波があるということは、デザインはPR費用・販売促進費用と同様のものとしてとらえられているケースが多いと考えることができそうです。
(単位:百万円)
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2017年 | |
建設業 | 5,095 | 4,134 | 5,602 | 5,094 |
製造業 | 56,970 | 49,561 | 55,385 | 56,254 |
電機、ガス、熱供給、水道業 | 812 | 1,122 | 604 | 456 |
情報通信業 | 27,011 | 27,198 | 28,328 | 43,817 |
運輸業、郵便業 | 2,234 | 1,733 | 2,319 | 2,503 |
卸売業、小売業 | 33,240 | 34,248 | 32,049 | 33,519 |
金融業、保険業 | 2,729 | 3,034 | 3,986 | 2,436 |
不動産業、物品賃貸業 | 2,728 | 4,145 | 3,060 | 3,966 |
学術研究、専門・技術サービス業(同業者を除く) | 12,094 | 18,133 | 13,917 | 12,310 |
宿泊業、飲食サービス業 | 6,738 | 4,341 | 4,961 | 6,805 |
生活関連サービス、娯楽業 | 8,999 | 12,934 | 11,879 | 10,562 |
教育、学習支援業 | 4,001 | 5,139 | 4,186 | 4,349 |
サービス業 | 20,229 | 19,096 | 22,439 | 13,617 |
公務 | 2,189 | 2,609 | 2,677 | 2,721 |
同業者 | 18,662 | 17,391 | 15,370 | 20,562 |
その他 | 8,942 | 8,844 | 6,836 | 7,922 |
合計 | 212,673 | 213,662 | 213,598 | 226,893 |
まとめ
今回はデザイン業に関する統計データに関して、近年の数値推移の傾向を確認してきました。
統計データは継続して推移をみることで、様々な傾向が見えてくるものであるため、今後も数値発表される際には、最新の数値を反映した傾向を確認していく予定です。