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デザインと中小企業経営を繋ぐブログ

産業競争力とデザインを考える研究会 中間とりまとめ内容について

 

 

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はじめに

昨年11月22日に、産業競争力とデザインを考える研究会第6回目が開催され、中間とりまとめの資料が経済産業省のHPにアップされました。

www.meti.go.jp

本研究会は昨年7月よりスタートしており、本ブログでもその動静を研究会開始当初より注目してきました。今回のブログでは、この中間とりまとめ内容を整理していきたいと思います。

design-management.hatenablog.jp

 

 

第6回までの開催状況

 本研究会は基本的に一般向けには公開されていないため、詳細な開催状況は把握できませんが、下記の委員による提出資料に関しては経済産業省のHPよりダウンロードすることができます。いずれの資料も非常に参考になる内容のため、デザイン知識補充のための資料としても、有効だと思います。

 

※提出回:提出者:「資料の内容」

  • 第二回:GKデザイン機構 代表取締役社長 田中一雄氏:「各国のデザイン政策・デザインの変化・ブランド形成事例」
  • 第三回:A.T.カーニー株式会社 日本法人代表 梅澤高明氏:「デザインと産業競争力に関する先行研究・産業界を巻き込むための初期的提案」
  • 第四回:株式会社タクラム・デザイン・エンジニアリング代表取締役 田川 欣哉 氏:「第四次産業革命とデザインの役割」
  • 第五回:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 小林 誠氏:「知財戦略におけるデザイン活用と価値創出」

 

 中間とりまとめ内容について

中間とりまとめでは、下記4つの項目に関して言及されています。

1.デザインのとらえ方(言葉の定義)

本報告書において、デザインとは、造形の美を出発点としつつ、製品・サービスあるいは企業イメージなどが顧客、さらには社会にとって好ましい魅力的なものとなるよう計画・設計すること、と定義する。このようなデザインは、イノベーション創出の有効なツールの一つとして期待される。

 デザインとはもともと曖昧な定義の言葉であることに加え、近年ではサービスデザイン・ユニバーサルデザインといった広い意味でデザインという言葉が使われるケースも多くなっています。そのため調査研究を行う前に、デザインという言葉を、どの領域まで含んだ言葉として定義するかは非常に重要です。

 そうした中、当研究会では「軸脚を造詣・意匠という見た目の分野に設定し、そこから派生するUXデザインや企業活動全体としてのブランディング」までをデザインの範囲としているのではないかと、私は判断しました。

 

 

2.デザインマインドの高め方

美しい自然や魅力的なデザインに触れる機会に恵まれることで、おのずとデザインマインドが育まれる。国民のデザインマインドを高めるためには、それぞれの地域や地方の特徴を生かした、外国人をも魅了しうる街づくりやインテリア、製品やサービスを創出し、国民にとって身近な生活環境を整えることが効果的である。

 デザインマインドの向上とは、デザインの重要性や関連する知識を、国民に普及啓発するという意味だと思いますが、その具体策に関しては身の回りの建築や製品サービスのデザイン性を向上させることとしています。

 しかし、「国民のデザインマインドが高まることにより魅力的なデザインが身近な生活環境に増えていく」という逆の視点での具体策を考えることもできるため、あまり有効な考え方ではないように感じました。同資料の補足文章では、外国人への魅力ある街づくりといった観光促進や地域振興策にまで話が及んでおり、デザインの普及啓発という項目から少しブレてしまっているようにも感じます。

 

3.デザイン経営のあり方

企業が顧客に提供したい独自の価値を、一貫したデザインコンセプトによって表現することで、企業のブランドが確立し、非価格競争力が高まるものと期待できる。これは、デザイナーが企画・開発段階から関わり、開発、設計、調達、生産、販売、広報など企業の各部門が、一貫したデザインコンセプトを共有する、すなわち、経営の中にデザインを位置付けることによってはじめて実践できる。

 デザイン経営のあり方に関しては、当ブログとしては一番注目する項目です。上記の文章からは、「デザイン活用の効果は企業ブランドを確立し利益率を向上させる」と読み替えることができます。

 このあたりの内容は「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」でも示されてきたことですが、非価格競争=利益率の確保につながる根拠やポイントが示されれば、企業へのデザイン導入という面では非常に追い風になる内容だと思います。

 また、中間とりまとめ資料の中では、デザイン経営を実現するうえでの取り組み項目に関しても例示されています。その中で注目したいのは「一貫したデザインコンセプトによる表現」と「デザインを意識した企業組織」という項目です。

 「一貫したデザインコンセプトによる表現」に関しては、一貫したデザインコンセプトを長期的に継続することでブランド形成や店舗設計・販促広告にも好影響を与えるとしています。長期的な取り組みやブランド形成といった項目は、企業の事業計画にも連動するものです。であれば、このブログでこれまで主張してきた通り、経営者やコンサルタントの側にもデザインの知識が必要といえるのではないでしょうか。コンサルタントの側がこうしたコンセプトの一貫性を定着させる役割も担えるのではないでしょうか。

 「デザインを意識した企業組織」に関しては、これまであまり触れられてこなかった内容だと思います。社内にデザイン経営を定着させるにはデザイナー出身者を役員にするなど組織体制の工夫点があげられています。最終報告書ではこのような組織上の工夫点にも記載があることを期待します。

 

4.知的財産権制度のあり方

我が国の意匠登録制度は、デザインの創作を奨励するとともに、デザインによるブランド形成を行うにあたって重要な役割を果たす。一方、同制度は、必ずしも今日のIoT 化する社会変革やデザインの広がりに適合するものではなく、保護が限定的であり、手続きが煩雑であるとの指摘も少なくない。近年重視されるデザインの動向を見据えつつ、他の知的財産権制度も含めたデザイン経営に資する制度設計が求められる。

 

 知財制度に関しては、基本的に①現代に合わせた意匠範囲の拡大②意匠取得の事務コスト削減の2つを目指す内容になっています。

 ①意匠範囲の拡大に関しては、店舗の空間デザインの分野にも拡大を検討することが示唆されており、今後の動向が気になるところです。

 

 まとめ

 デザインに関する有識者が集まっていることから、検討に使われた資料や中間のとりまとめ内容は参考になる内容です。

 ただ本研究会の当初の資料では、デザイン投資への効果測定にも調査研究が行われる旨が記載されていましたが、今回の中間とりまとめでは効果測定に関する内容はありませんでした。この効果測定こそが、企業経営者へデザインの重要性をPRするうえで一番重要な項目といえるため、最終報告書では何かしらの言及があることを期待したいところです。

 年度末に最終の取りまとめが公開された際には、またその内容についてこのブログで触れていきたいと思います。