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第四章 結論 残された課題

 

 

 

第四章 結論 残された課題

4.1 結論

 本論文での結論としては、今まで見てきたとおり、デザインの経営に対する効果のポテンシャルは高く、それを最大限に引き出すためにはデザインコーディネーターとしての中小企業診断士が必要不可欠ということである。

 本論文での作成を通して見えてきたこととは、企業側とデザイナー側の相互理解が足りないがために、デザイン導入化効果の本来のポテンシャルが一般的に認識されていないということに尽きる。企業側ではデザイン導入の手順やデザイナーとの関係性をどう構築するかというノウハウがない。デザイナー側では企業、とりわけ中小企業経営の実態を詳細には理解していないことが多い。

 その相互理解不足を埋め、デザインの効果を100%引き出すための具体的内容が、本論文2章で示した導入時の成功要因であり、3章で示したデザインコーディネーターに求められる能力である。

 この企業とデザイナーの相互理解不足は、まさに経営へのIT導入における、企業とITベンダーとの相互理解不足と同様の物である。デザイン、ITともに、経営に活かすことができれば強力な競争優位を確立できるツールだが、その導入方法は一長一短ではなく非常に高度な知識とノウハウが求められる。

 やみくもに導入を進めても成功することはほぼ無いといっていいだろう。導入に失敗し高額な投資を無駄にするくらいなら、ある程度の費用をかけてコーディネーターを雇い、成功確率を上げたほうが合理的と言える。

 デザインコーディネーターの存在が、企業経営での新たな競争力の源泉としてのデザインの普及に繋がるものと私は考えている。

 デザインが停滞する日本経済の牽引役の一つとなることを期待する。

 

4.2 残された課題 デザイン導入の数値的効果検証

 残された課題としては、デザイン導入の数値的効果を如何に検証するのかという点である。デザインコーディネーターには、企業とデザイナーの橋渡し役だけでなく、企業側に対するデザインの必要性を啓蒙する役割もあることが望ましい。その際、企業に対する一番効果的な訴求方法は、デザイン導入例の数値的効果を明示することであろう。

 デザイン導入の効果を数値化しようという試みは、これまでも模索されてきたことではあるが、実用的な仕組みは未だ確立されてはいない。今回本論文を作成する過程の中で、筆者の中小企業診断士に関連する知識を活かし、数値的効果検証の足掛かりが画ければと考えていたが、本論文ではその具体案を示すには至らなかった。

 しかし、数値的効果検証方法の模索はデザイン導入に関しては避けて通れない点であり、今後もその方法案は模索していきたいところである。

 

参考文献

経済産業省 日本のデザイン政策の変遷

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/human-design/policy1.html

近畿経済産業局「近畿におけるデザインビジネスの活性化方策に関する調査報告 2008年」(11p~63p)

 

日本政策投資銀行 「デザインイノベーションによる関西企業の高付加価値化戦略 2013年」(3p~6p)

 

産業研究所「デザイン導入の効果測定等に関する調査研究 2006年」

(10p~33p 103p~120p)

 

木全 賢 井上 和世『中小企業のデザイン戦略』PHPビジネス新書 2009年

(38P~122p)

 

特定非営利法人 ITコーディネーター協会「ITC実践力ガイドラインver.1.0 2010年」(14p~19p 26p~29p)

 

公益財団法人日本デザイン振興会 「第一回意識調査 2007年」

http://www.jidp.or.jp/archives/res/0801/index.html

 

経済産業省「生活者の感性価値と価格プレミアムに関する意識調査 2006年」(5p~16p)

 

財団法人 知的財産研究所 「企業の事業戦略におけるデザインを

中心としたブランド形成・維持のための産業財産権制度の活用に関する

調査研究報告書 2011年」(48p~58p 66p~71p 84p~111p 351p~357p)

 

経済産業省 企業法制研究会 「ブランド価値評価研究会報告書 2002年」

(21p~44p)

 

特許庁 「ものづくり中小企業のための意匠権活用マニュアル2008年」

(1p~23p)